SSD(Solid State Drive)はHDDの代わりに用いることを目的として作成された記憶装置です。

HDDのようにディスクや磁気ヘッド(電磁石)を機械的に駆動させることで読み出し/書き込みを行うのではなく、記憶素子としてフラッシュメモリを使用し、電気的にデータの出し入れを行っています。

このフラッシュメモリを使用しているという点に着目して、SSDの劣化の原因と寿命について今回は見ていきたいと思います!


本来、SSDを理解するうえで必要なフラッシュメモリを学んでいくには、半導体の知識が多少なりとも必要です。

ですが、今回は電子系統の知識が全くない方でも理解できるよう、できる限り簡単にデフォルメ化しつつ解説していくので安心してください。



SSDの読み書きの仕組み

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SSDのデータの読み書きの仕組みを知ることで、おのずとSSDの劣化の原因が見えてきます。ここでは、簡単にSSDがデータを記憶している方法について見ていきましょう。

まずは、フラッシュメモリについての大まかな説明からです。


SSDに搭載されている記憶素子フラッシュメモリとは


メモリICは、揮発性メモリと不揮発性メモリに分類されます。
  • 揮発性メモリ:電源がOFFでデータが消去される
  • 不揮発性メモリ:電源がOFFでもデータは消えない
ということから、今回取り上げているSSDに搭載されている「フラッシュメモリ」は不揮発性メモリであることが分かります。(HDDも不揮発性メモリ)

ちなみに、パソコンに搭載するメインメモリーは処理に使う情報を保存し、電源を切るとデータが消えるため揮発性メモリに分類されます。


~フラッシュメモリの特徴~

フラッシュメモリの名前の由来は、記憶が行われ、消去が電気的に一挙(フラッシュ)に行われるというところからきています。

特徴として、以下のようなことが挙げられます。
  • 集積度に優れている
  • 消去と書き込み速度が速い
  • F-Nトンネリングによる書き換えのため寿命が長い
  • 消費電力が小さい
また、21世紀に入って著しく値下がりしたため、USBメモリ、SDカード、SSDまで幅広く利用されるようになりました。


【USBメモリ】
基板上にフラッシュメモリチップが搭載。多くのUSBメモリは1個または2個のフラッシュメモリチップとメモリコントローラーを搭載している。

【SSD】
パソコンに使用される2.5インチ型のSSD。多くのフラッシュメモリを搭載し、大容量でかつ高速アクセスが可能。


このように、フラッシュメモリは高速で汎用性の高いメモリとして我々の生活に欠かせないものとなっています。


フラッシュメモリの動作原理


※ここからがSSDの劣化と寿命の問題の根幹に関わる、非常に重要な説明になります

フラッシュメモリは不揮発性の半導体メモリであるため、それを構成するフラッシュメモリセルは制御ゲートと半導体基板という構成になっています。

フラッシュメモリセルとは、それ1つで1ビットの情報を記憶することができる半導体素子のことです。これを持っている数が多いSSDほど大容量となります。

これをいくつも並べたものが、フラッシュメモリであり、さらにそれを並べたものがSSDやUSBメモリとなるわけです。

つまり、
SSD,USBメモリ > フラッシュメモリ > フラッシュメモリセル
という関係性になります。


~フラッシュメモリセル動作原理~


フラッシュメモリを構成するメモリセルは以下のような構成になっています。
FlashM2(1)
半導体素子によって構成されており、
電圧を印加するドレイン、ソース、コントロールゲートという端子、それに加えて浮遊ゲート、絶縁体、P型半導体、N型半導体という構成になっていることが分かるかと思います。


SSDの劣化の原因と寿命の話において半導体工学的な話をすると非常に面倒なことになるので、ものすごくザックリと説明します。


コンピュータは、情報を0と1の組み合わせで記憶しているということを念頭に置くと、論理値状態"1"と"0"は以下に表されます。
FlashM3 (1)FlashM4 (1)

このように絶縁体中(浮遊ゲート)に電子が閉じ込められているか否かで、「0か1」という1ビットの2つの状態を作り出しているわけです。


このように、浮遊ゲートに電子が出たり入ったりする現象は、浮遊ゲートと半導体基板の間が非常に薄い絶縁体(絶縁膜)であるという条件のもと「トンネル効果」と「ホット・エレクトロン」と言われる物理現象から説明できます。
【書き込み時】
ソースをGNDに接続し、ドレインとゲートに高電圧を印加、ホット・エレクトロン(電子)はソース側から浮遊ゲートと基板間のゲート絶縁膜をすり抜けて浮遊ゲートにたまる。(論理状態0)

【消去時】
ソース開回路状態にドレインに高電圧を印加し、制御ゲートをGNDに接続する。すると、浮遊ゲート内の電子はドレイン側に引き抜かれる。(論理状態1)
具体的な劣化の原因は2章で詳しく述べますが、書き込み時と消去時の面倒な処理は抜きに、SSDの寿命を考えるうえで重要になってくる点は以下の通りです。
POINT!フラッシュメモリは「トンネル効果」を利用して浮遊ゲートと電荷のやり取りを行うことで、読み出し/書き込みを行う。


(余談)~データの検出方法~

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データを読み出すにはソースからドレインに電流を流してみる。フローティングゲートに電子がある場合(0)の時、電流が流れにくくなるためこれを検出しデータを読み出す。


SSDに用いられるNAND型フラッシュメモリの特徴


SSDの寿命という観点から知っておきたいこととして「SSDは主にNAND型フラッシュメモリで構成されている」ということがあります。

簡単に言うと、先ほどからお話しているフラッシュメモリセルが論理回路のNANDに対応した特性で接続され、フラッシュメモリを形作っているということです。

この論理回路NANDに対応した特性でメモリセルが接続されていることにより、SSDの特性ないしは、寿命まで決まってきます。


~NAND型フラッシュメモリとは~


「一括消去でいいから、高集積で安価な電気的に書き換え可能なメモリを作りたい!」という発想のもと生まれたメモリです。

ページ数分のセルが直列に接続されているという作りになっているため、バイト単位での書き換え動作は不得手というデメリットがあります。
POINT!
  • 集積度に優れ、大容量化向き
  • ページ単位での高速書き込み
  • 消去と書き込み時間が短い
  • 書き換え寿命は1万回
SDカード、メモリースティック、SSDなどに用いられている



SSDの劣化の原因

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上で図まで引っ張り出して説明した、フラッシュメモリセルの動作原理にSSDの劣化の原因となる要素があります。

メモリセル動作原理から見る劣化の要因


1章のフラッシュメモリセルの動作原理で
フラッシュメモリはトンネル効果を利用して浮遊ゲートと電荷のやり取りを行うことで、読み出し/書き込みを行う」というまとめをしました。


トンネル効果は以下のように説明されています。
トンネル効果、量子トンネル、または単にトンネリングとは、非常に微小な世界において発生する物理現象であり、粒子が、ポテンシャル障壁を貫通し、あたかもトンネルを抜けたかのように反対側に現れる現象である。※中略あり(引用:Wikipedia)
トンネル効果とは、量子力学の分野で、エネルギー的に通常は超えることのできない領域を粒子が一定の確率で通り抜けてしまう現象のことである。(引用:weblio)

つまり、絶縁体の障壁を「通り抜ける」「すり抜ける」「貫通する」という現象が起きているわけです。

何度も貫通しているとなると、劣化するのも頷けます。
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このように、トンネル効果による書き換えの繰り返しを処理のたびに行っているため、トンネル酸化膜が劣化することでSSDの寿命を迎えるということです。


⇒話を障子に置き換えると分かりやすい


あまりピンとこないという方は、話を障子に置き換えてみるとわかりやすいと思います。
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日本人なら誰しも、幼いころ障子に穴をあけて怒られた経験があるのではないでしょうか、

障子は本来、視線や風、外気などを遮るものです。
そこに幾度となく穴をあけてしまうと、風でもなんでも通り抜け放題で全く障子としての機能を果たさなくなります。

それと同じように、酸化膜に電子を何度も通り抜けさせていると酸化膜も劣化して本来の機能を果たさなくなるというわけです。
フラッシュメモリの課題!
  • 長時間書き換えがないと、浮遊ゲートから電子が自然放電する。
  • 書き換えを多数繰り返すとトンネル酸化膜が劣化、浮遊ゲートから電子が抜けやすくなる。


SSDの寿命と症状、HDDとの比較

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上記で示したことから分かるように、SSDは永遠に動作するものではありません。いつかは、買い替えなければならない時がきます。

その時のために、寿命を迎える前兆や症状を見極め、買い替えに備えるということができるようになっておきましょう。


SSDの寿命は何年くらい?


ずっとお話しているように、SSDにはフラッシュメモリが搭載されています。このフラッシュメモリの特徴として、以下のようなことが挙げられます。
電子の注入抽出に低いエネルギーのF-Nトンネル電子を使用することで、酸化膜への書き換えに伴うダメージが減少し、寿命が長くなると同時に、消費電力を小さくすることができる
さらに、
SSDに搭載されているフラッシュメモリは「NAND型フラッシュメモリ」ということを1章でお話ししました。NAND型フラッシュメモリの書き換え寿命は1万回とされています。

以上のことから一般的な寿命の目安は平均4年~5年程度(時間換算で約35000~44000時間)と言えるでしょう。

ですが、SSDの種類、動作環境、データの管理方法などにより大きく左右されるため、あくまで目安と考えてください。


HDDとSSDの寿命どっちが長いの?


ちなみにHDD(ハードディスクドライブ)の寿命は、4年前後とされています。

この結果も、使用環境によるとしか言えませんのでSSDとHDDに大きな寿命の差は無いといっていいでしょう。

~寿命に関わるHDDとSSDの大きな違い~


寿命にこそ大きな違いはありませんが、SSDとHDDには大きな違いがあります。

それは、SSDは電気的にデータの読み出し/書き込みを行うのに対し、HDDではディスクや磁気ヘッドを機械的に駆動させることで、データの出し入れを行っている点です。


このことから、HDDはデータが破損してしまう論理障害だけではなく、物理的に故障してしまう物理障害のリスクが常に付きまとうことになります。その点、SSDは機械的に駆動する部品がないため、振動や衝撃にも強く、突発的なデータ障害の危険性は限りなく低くなるといえるでしょう。

データが消えるリスクの高さを比較すると、やはりSSDが優れています。


SSDの寿命目下の症状や兆候は?


「2章SSDの劣化原因」で示したように、SSDに搭載されているフラッシュメモリセルの課題として
  • 長時間書き換えがないと、浮遊ゲートから電子が自然放電する
  • 書き換えを多数繰り返すとトンネル酸化膜が劣化、浮遊ゲートから電子が抜けやすくなる
という2つをあげました。


これから分かることとして、SSDが劣化し、寿命が近づいてきた兆候として「データ化けが発生する!」ということが言えます。

パソコンが急に落ちたり、データを開く際にエラーが起きるようなら、そろそろSSDの寿命的に怪しいと考えられます。


逆に言うと、これまであまり使用していない、使用頻度の高くないSSDのほうが、バックアップなどのデータを長期保存するのに向いているということになります。


できるだけ寿命を延ばしてSSDを長持ちさせるには


フラッシュメモリは、書き換え回数に限度があり、寿命を延ばすために特定のメモリ領域に書き換え操作が集中しないようコントローラーによって工夫されています。

SSDそのものの寿命を延ばすことは難しいかもしれませんが、SSDを選ぶ際により長寿命のもの、つまり、優れたコントローラーを導入しているSSDを選ぶことが結果的に長寿命に繋がります。


そんなこと言っても、優れたコントローラーの仕様を見抜くなんてことは我々にとってはほぼ不可能と言ってもいいでしょう。

そこで、
できるだけ長寿命のSSDを選べるかもしれないポイントを「5章以上を踏まえたおすすめSSD」で紹介しているので最後まで読んでいってくださいね(*・ω・)ノ



HDDと比較してSSDが注目される理由まとめ


SSDは、HDDのように回転ディスクを持たないため、読み取り装置(ヘッド)をディスク上で移動させる時間(シークタイム)や、目的のデータがヘッド位置にまで到達する待ち時間(サーチタイム)がなく、高速に読み書きできる。

モーターなど駆動部がないため、消費電力も少なく、機械的に駆動する部品もないため、衝撃にも強く、静かである。

モダン木綿
「静かで,速くて,頑丈」なんてSSD最高やな!
紳士木綿
実は近年、SSDが普及し始めたのはそれだけの理由ではないんだ

HDDは大容量化は進んでいるが、アクセス性能は頭打ちになっている。一方、CPUは10年100倍のペースで年々進化しており、ストレージ側の性能改善が急務

そこで低価格化しているフラッシュメモリー搭載のストレージが注目されている。



以上を踏まえたおすすめSSDと今後の展望


以上、SSDの劣化の原因やNAND型フラッシュメモリの特性を考えたうえで、おすすめできるSSDを紹介します。

おすすめのSSD


【選考理由】


1.保証期間が長い

「3章SSDの寿命と症状、HDDとの比較」のなかで、できるだけSSDの寿命を保つ方法として優れたコントローラーを積んでいるものを選ぶということをいいました。

その判断材料として保証期間に注目します。メーカーの保証期間が長いほど、メーカーが耐久性に自信をもって販売しているといえます。つまり「優れたコントローラーを積んでいてその期間までは安定して使用できることを保証している」というふうに言い換えることができるからです。


2.SSDコントローラー

寿命に大きく影響してくるコントローラにおいて、プロ向けのSSD「860 Pro」にも使われている「Samsung MJX」と搭載しており、高い処理速度を達成するハイエンドなものとなっています。


3.TLC(トリプルレベルセル)

フラッシュメモリには,
  • SCL(1bit)
  • MLC(2bit)
  • TLC(3bit)
  • QLC(4bit)
と種類があり、扱うビット数が多くなるほどより緻密な制御が求められます。一方、同じ面積で数倍の情報量を記憶できるというメリットがある。

ですが、欠点として「扱うビット数が増えるほど、トンネル絶縁体の劣化にはよりセンシティブであり、セルの寿命が短く、かつデータエラー率が高くなる」という特性を併せ持つことになるのです。

このSSDは、TLCであるにも関わらず5年という期間保証している、安定動作を約束しているという点で優れたSSDであることが伺えます。


主に以上の理由から、今回こちらのSSDをおすすめに選ばせていただきました。


SSDの今後の進化(Fe-NANDフラッシュメモリ)


研究段階であり、現在、製品化までこぎ着けていませんがNAND型フラッシュメモリに比べ、性能が著しく向上するといわれているのが「Fe-NANDフラッシュメモリ」です。

特に、消費電力と書き換え寿命の面での性能向上が大きく、NAND型フラッシュメモリの書き換え回数が1万回に対し、Fe-NANDフラッシュメモリは1億回以上の書き換え回数を達成しています


Fe-NANDフラッシュメモリは、次世代高密度大容量不揮発性メモリーとして今後注目していく必要がありそうです( -д-)ノ